次の提案は、高江が編集長をしていた最後のプチタンファンに掲載されたものです。
皆さんはどう思いますか? ご意見をお聞かせください。
プチタンファン編集長 高江幸恵
一番欲しいのは「自由な時間」
それと、プチタンファンで実施した「お母さんの実感アンケート」の中で「一番欲しいもの」は「自由な時間」、しかも「せめて1カ月に1日一人になりたい」と答えるお母さんが一番多かったこと。お母さんの日常を調査したときもも、「日中大人同士の会話がない」や「まったく外に出ない日がある」という回答がそれぞれ3分の1ずつありました。
気持ちが内向きになっているお母さんを、どうやったら外に向けられるか…ということを考えたら、「義務化」というレールを用意することが一番いいのではないか、という結論に達したのです。
私は、「義務保育」ということを、ここ数年言い続けています。これは、保育園や幼稚園などの集団生活に入る前の子どもを、近くの保育園に、月に1回無料で預ける、というシステムです。
母子手帳をもらうときに、たとえば「満6カ月になったら○○保育園に行ってください」という情報を伝えます。健診と同じ手続きですね。
なぜ、「義務保育」の必要性を感じるかというと、24時間365日、育児を一人で背負っているお母さんたちを、少しだけでも開放したいからです。編集部に届くたくさんのお手紙を読んで、そう思いました。
「理由は問わず」の保育
「義務保育」のメリットは、子どもを預ける“大義名分”ができることです。夫やお姑さんが何と言おうと「義務」なんですから、堂々と預けられます。
それに、預けるための「理由」は問われないから、美容院だろうと映画だろうと、何をしてもいい。元気を取り戻したら、また次の「義務保育」の日までがんばれるかもしれません。
本当は、「リフレッシュのために温泉に1泊旅行」という理由で24時間保育ができるような世の中になってほしいんです。
子どもにとっても、親以外の大人や、同年齢の子どもの集団と関わることはいい影響を受けると思います。
保育士が、すべてのお母さんと接触するわけですから、なかには虐待に近いところにいる母子を早めに発見できる可能性もあります。
育児は社会がするもの
私が「義務保育」を提唱するのは、「育児は社会がするものよ」というデモンストレーションの意味もあります。ここまで少子化が進んだのだから、月に1日くらいは行政が子守をしてよ、ということです。
たしかに受け皿の整備は大変ですが、保育士を増やせば雇用対策にもなるでしょう? 地域での子育てをバックアップする場として保育園などをもっと活用したほうがいい。お金がかかるといっても、お金で解決がつくことならば、やるべきです。
規制緩和という時代の流れに逆行している、という批判を受けますが、私は、すべてのお母さんが福祉の恩恵を受けるべきだと考えます。「支援センター」や「ファミリー・サポート・センター」が充実していくことは、もちろん大切です。でも、どんなにいいシステムや場があったとしても、そのことを知らないお母さんや、そこに行かないお母さんたちはどうなるのでしょう? 課題は、「密室育児」をいかに破るか、ということなのです。
育児をしながらでも、お母さんが自分自身の人生を楽しむことができる、というしくみを、国として保障すべきです。それが本当の意味での育児支援、少子化対策につながると思います。
(プチタンファン8月号・特別編集「欲しいのは、お疲れママを開放する子育て支援」より)